俳句lesson
有名な俳句を暗唱し、意味まで人に教えることができるような、教養のある人間になりましょう
●松尾芭蕉
五月雨を
集めてはやし
最上川
この句ゆえに、最上川の名を知らない人はいないでしょう。
船問屋でもあった俳人、高野一栄宅での句会において詠まれた句ですが、これもまた初案は違うものでした。
「はやし」ではなく「すずし」だったのです。
すさまじいギャップです。
「すずし」というと、水面に落ちた葉っぱもゆったりと流れていくような、のどかな川を連想しますが…
「はやし」だと、ものすごく水量が多くてゴーゴーと音をたてながら渦巻いている川を思い浮かべますよね。
では実際のところ、芭蕉が触れた最上川はどちらの状態だったのでしょうか。
結論から言うと、ゴーゴーと音をたてていたのです。
当時は梅雨で、雨が短い周期で降り続けていたそうです。
最上川の茶褐色の激流は、見る者を圧倒するほどだったようです。
では、なぜ第一声として芭蕉は「すずし」と詠んだのでしょうか。
それは実は、高野一栄の家にいるときの気持ちを表現したものだったのです。
最上川のほとりにあった高野宅は、川の上を通って温度を下げた風が良い具合に部屋に入り込んできました。
これがそうとう心地良いものだったのです。
この句が詠まれたのは1689年5月29日ですが、新暦でいえば7月15日にあたります。
夏真っ盛りです。
旅人であった芭蕉にとって、夏の暑さを少しでも回避できることは、かなりの喜びだったのです。
ですから「すずし」には、「この家は素晴らしいね」という、高野一栄に対する賛辞と御礼の意味が込められているというわけです。
ところが数日後、芭蕉は身をもって最上川の真の姿を思い知ります。
芭蕉は最上川を船で下ったのですが、奥の細道に「舟あやうし」と記されているほど、濁流に翻弄された大変な川下りだったのです。
後日、「すずし」は「はやし」に改められました。
そちらのほうが最上川の大観を表現するのに適切だと判断したわけです。
「日本三大急流」の一つとして有名になった最上川。もちろん芭蕉のおかげです。
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