俳句lesson
有名な俳句を暗唱し、意味まで人に教えることができるような、教養のある人間になりましょう
●松尾芭蕉
夏草や
兵どもが
夢の跡
これもまた1689年5月、芭蕉が奥州平泉の地を訪れたときに詠んだ句です。
平泉といえば、源義経が自害した地、そして義経をかくまった奥州藤原氏が頼朝によって滅ぼされた地です。
兵(=つわもの)というのは、まさにその人たちのことを指しています。
父・義朝を殺した平家への復讐の念を抱いて平泉に入った義経は、平家を滅ぼすことはできたものの、兄・頼朝との対立により、最終的には自害に追い込まれます。
そして、義経をかくまったことを罪とし、頼朝は藤原泰衡を殺し、100年以上にわたって栄えた奥州藤原氏を葬り去ったのです。
様々な夢や野望が行き交ったこの地、義経の拠点にも、今となっては夏草が静かに生い茂っているだけなのだなぁ…と、芭蕉は当時を偲んで詠んだのです。
義経の自害と奥州藤原氏の滅亡は1189年。奇しくもちょうど500年後にこの地を訪れたのが芭蕉でした。
500年前は平安京に次ぐ人口を誇り、栄えていた平泉。当時の影も形のない景観に対して、芭蕉は何とも感慨深くなったわけです。
ですから、この句に詠まれている情感は、平家物語の「諸行無常の響きあり」の一節に通じるものがありますね。
平家物語の続きのように捉えることもできるわけです。
平家を滅ぼした立役者の1人である義経もまた、間もなく死に追いやられてしまったんだなぁ…と。
そのように考えると、非常に深みを持つ句のように思えてきます。
さて、奥州藤原氏を滅ぼした頼朝は、征夷大将軍となり、鎌倉幕府を開くに至ります。
朝廷から独立した政権は、そこから延々と、680年以上も続くこととなったわけですが、それもまた明治維新により終りを告げました。
やはり永続するものなど、何一つないのですね…歴史に思いをはせるほど、この句はどんどん深い味わいをもたらしてくれます。
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